東京地方裁判所 昭和43年(特わ)323号 判決 1969年3月22日
本店所在地
東京都中央区日本橋蠣殻町一丁目九番地
カネツ貿易株式会社
(右代表者代表取締役若林若俊)
本籍
東京都中央区西八丁堀三丁目一一番地三
住居
同都江戸川区松島四丁目二五番一一号
カネツ貿易株式会社代表取締役
若林若俊
大正八年一月二一日生
右被告人らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官屋敷哲郎出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告カネツ貿易株式会社を罰金二、五〇〇万円に、
被告人若林若俊を懲役八月に各処する。
被告人若林若俊に対し、本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告カネツ貿易株式会社は、東京都中央区日本橋蠣殻町一丁目九番地に本店を置き、東京殻物商品取引所等商品取引所において商品仲買人としての登録をなし、右清算市場における上場商品の売買取引の受託業務及び媒介委託、定期受渡し、現物取引の仲介等を目的とする資本金四、八〇〇万円の株式会社であり、被告人若林若俊は、昭和三八年九月六日以降右会社の代表取締役としてその業務全般を統轄しているものであるが、同被告人は被告会社の業務に関し法人税を免れるため、架空委託者名義を用いて自社玉売買をすることにより売買益を除外する等の方法により所得を秘匿したうえ、
第一、昭和三九年三月一日から昭和四〇年二月二八日に至る事業年度において、被告会社の実際所得金額は別紙第一修正損益計算書記載のとおり二億二、二九八万三、八四三円であつて、これに対する法人税額は八、二三六万八、三〇〇円であつたにもかかわらず、昭和四〇年四月二七日、東京都中央区日本橋堀留二丁目五番地所在の所轄日本橋税務署において同署長に対し、所得金額は四、四四八万二、二九三円でこれに対する法人税額は一、四五四万八、〇三〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額と申告税額との差額六、七八二万〇、二七〇円については法定の納付期限内に納付せず、もつて不正な行為により右同額の法人税を逋脱した
第二、昭和四〇年三月一日から昭和四一年二月二八日に至る事業年度において、被告会社の実際所得金額は別紙第二修正損益計算書記載のとおり一億五、七五八万五、八七九円であつて、これに対する法人税額は五、四九〇万九、二〇〇円であつたにもかかわらず、昭和四一年四月二七日、前記日本橋税務署において同署長に対し、所得金額は六、九六一万六、五一六円でこれに対する法人税額は二、二三七万二、一四〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額と申告税額との差額三、二五三万七、〇六〇円については法定の納付期限内に納付せず、もつて不正な行為により右同額の法人税を逋脱した
(証拠の標目)
(一)、全般につき
一、登記官佐野直作作成の登記簿謄本
一、吉田明の大蔵事務官に対する質問てん末書五通(昭和四二年四月五日付 以下四二・四・五・の如く略記、四二・五・四、四二・五・八、四二・一二・二七、四三・一・八)並びに検察官に対する供述調書四通(四三四・五、四三・四・一二、四三・四・二六、四三・四・二七)
一、大蔵事務官杠忠義作成の税額計算書二通
一、押収にかかる勘定元帳計二綴(昭和四三年押第一、一〇九号の一、二)、別口勘定収支表一綴(同号の八)、修正申告メモノート一綴(同号の一六)並びに法人税確定申告書計二綴(同号の二六、二七)
一、被告人若林若俊の大蔵事務官に対する質問てん末書三通並びに検察官に対する供述調書五通
一、被告人若林若俊の当公判廷における供述
(二)、別紙各修正損益計算書の勘定科目のうち、
(1)受入手数料について
一、大蔵事務官杠忠義作成の査察官調査書(仮装自社玉売買分受入手数料合計表)
(2)自社玉売買益について、
一、大蔵事務官杠忠義作成の査察官調査書仮装自社玉売買計算書並びに現物関係調査書)
一、高橋孝一の検察官に対する供述調書一通(四三・五・四)
一、押収にかかる先物取引勘定元帳計八冊(前同号の一七ないし二二)並びに委託者先物取引日記帳五冊(同号の二八)
(3)外務員給料手当、職員退職金、厚生費福利厚生費、賃借料、通信費、旅費交通費、交際費交際接待費、支払手数料、会議費、新聞図書費、雑費について、
一、吉田明作成の上申書二通(「別口経費の支払額について」と題するもの二通)
(4)職員給料手当、寄附金について、
一、吉田明作成の上申書一通(「簿外金の配分明細」)
(5)顧問料について、
一、吉田明の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(四三・一・八)
(6)印刷費、租税公課について、
一、押収にかかる経費明細帳計二綴(前同号の四、五)
(7)受取利息について
一、大蔵事務官杠忠義作成の査察官調査書(「銀行預金利息各期明細表」)
一、吉田明作成の上申書一通(「簿外貸付金の利息収入について」)
(8)雑損失について、
一、吉田明作成の上申書二通(「別口経費の支払額について」但し、四二・一一・二一並びに「簿外預金の消費明細について」)
(9)有価証券売却益について、
一、吉田明作成の上申書一通(「簿外有価証券の明細について」)
一、小谷愛夫の大蔵事務官に対する質問てん末書
(10)貸倒準備金繰入損、退職給与引当金繰入損、価格変動準備金操入損について、
一、日本橋税務署長伊藤庸治作成の証明書
(11)交際費限度額超過、交際費損金不算入について、
一、押収にかかる経費明細帳一綴(前同号の四)
(法令の適用)
被告人若林若俊の判示各所為中、第一の事実は昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条により、その改正前の法人税法第四八条第一項に、第二の事実は昭和四〇年法律第三四号法人法第一五九条第一項に各該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をなし、その刑期範囲内において同被告人を懲役八月に処し、なお諸般の情状を考慮し同法第二五条第一項を適用して本裁判確定の日から二年間、右刑の執行を猶予する。
被告カネツ貿易株式会社については、その代表者たる被告人若林若俊が同会社の業務に関して前示違反行為をしたものであるから、判示第一の事実については昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条により、その改正前の法人税法第五一条第一項に従い同法第四八条第一項の罰金刑を、第二の事実については昭和四〇年法律第三四号法人税法第一六四条第一項に従い同法第一五九条第一項の罰金刑を科すべきところ、いずれもその免れた法人税額が五〇〇万円を超えるので、第一の事実については改正前の法人税法第四八条第二項、第二の事実については現行法人税法第一五九条第二項により五〇〇万円を超えその免れた法人税の額に相当する金額(第一は六、七八二万〇、二七〇円、第二は三、二五三万七、〇六〇円)以下の範囲内において処断するものとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内において同被告会社を罰金二、五〇〇万円に処する。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 近藤暁)
別紙第一 修正損益計算書
カネツ貿易株式会社
自 昭和39年3月1日
至 昭和40年2月28日
<省略>
<省略>
別紙第二 修正損益計算書
カネツ貿易株式会社
自 昭和40年3月1日
至 昭和41年2月28日
<省略>
<省略>